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Spar ax−SP膜は、塗布点がγ分画の外側に有り、分離能も優れていることから、近年はSepar ax膜に代わって急速に普及してきている。しかし、依然としてSepar ax膜を汎用している施設もある。将来的なことを考えると、できるだけ早い時期にSepar ax−SP膜への変換をする必要がある。基準値の設定や再現性、自動化への対応は着々と進行しており、それに遅れをとらないようにしなければならない。多くの病態情報を読み取ることのできる蛋白分画検査は日常診療に十分反映されることが必要である。そのためには測定値と基準値が矛盾のない整合性のとれた関係であることが重要である。

(2)日本電気泳動学会標準操作法の現状とその問題点

電気泳動学会により血清蛋白質分画定量法の標準操作法が発表されたのは1965年であり、既に30年を経過している。セパラックス膜もここ数年以内には製造中止となる。電気浸透現象のない膜が圧倒的に多くの施設で使用されている今日、その膜に適正な標準操作法を提示する時期にきている。自動化された電気泳動装置にも膜のサイズ、緩衝液、泳動条件、染色法などの標準的指針が必要である。現在標準操作法として記述されている事項のうち、分画別抽出法は時代にそぐわない。膜の長さは6?pと規定してよく、緩衝液のイオン強度はモル濃度として表現すべきであり、膜の緩衝化時間や緩衝液の交換時期も明示すべきであろう。血清の塗布量、塗布位置、通電条件や泳動距離の指定など新しい標準操作法設定に向かって漸く一歩を踏み出した。

(3)血清蛋白分画の精度管理法

セルロースアセテート膜電気泳動法における血清蛋白分画の精度管理法確立に向けて、日常検査における施設内、施設間誤差変動の実態を調査し、信頼性維持、向上のための実戦的手法を検討した。コントロールサーベイとしてオリンパスAESおよび常光CTBシリーズを使用している全国36施設をピックアップし、標準血清を送付、その蛋白5分画値を解析した。その結果、施設間誤差、日内変動が認められ無視できないことと考えられた。分析技術上のばらつき要因についてきちんとした究明が必要である。効果的な精度管理を実施するためには、管理手法の確立と長期的に安定な管理用血清の確保、標準的検定法の決定などに取り組まなければならず今後への大きな課題であると認識しなければならない。

(4)血清蛋白分画における基準範囲の設定

血清蛋白分画の基準範囲設定は電気浸透現象のないセパラックスSP膜が広く普及したことで可能となった。検討結果には不十分な点や問題点もあるが、施設間差の大きい正常値の実態を考えれば有益であり、基準値の共同利用への第一歩となる。株式会社常光が行った調査によると、同じ装置、同じ膜を使用していても正常値にはかなりの差があり、その実態に驚かされた。基準値設定のためには除外すべきファクターをきちんとする必要がある。生理的条件や生活習慣などを厳密には考慮しなければならないが、あまり厳密にすると対象が少なくなり、組み合わせも複雑多岐にわたる。多施設の協力を得て、泳動条件(機種間差を含む)の差、対象の差など多くを今後検討しなければならないのが実情であろう。

 

 

 

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